社会の疑問

もはや「ジャニーズにブランド価値は無い」と考えるべきだろう

ジャニーズ性加害問題に関する疑問

ジャニーズ性加害問題が報道で大きく取り上げられています。再発防止特別チームの調査報告書を受けて、ジャニーズ事務所は故ジャニー喜多川氏による所属タレントへの性加害の事実を認め謝罪し、被害者への補償や救済を行うと公表しました。

この事件で特筆すべきことは、40年〜50年という長い期間にわたって性犯罪が行なわれ続けたということです。その間、誰も止められなかったということです。犯罪を犯した人が一番悪いことは言うまでもありませんが、それを知りながら見て見ぬふりをしてきた人たちもその犯罪を容認してきたという指摘を免れません。

私はこの事件の報道を受けて、いくつかの疑問を抱きました。その中でも最大の疑問は、「少なくとも数百人以上が被害を受けたと推測される事件で、被害を訴える人が20人ほどしか出てこないのはなぜか?そして、なぜ今もジャニーズの看板のもとで仕事をするタレントが多く存在するのか?」ということです。

当事者意識のないタレントが多いのでは!?

今回のこの事件に関する報道で私の目に映るのは、ジャニーズ事務所のタレントたちの中に大きく2つのグループが存在するのではないか…ということです。ジャニー喜多川氏の性加害問題を非難し、あるいは被害を訴え補償と救済を求めるグループ。そして、もう一つは、ジャニー喜多川氏の性加害問題を認識しつつもジャニーズというブランドの傘のもとでアイドルとして、あるいは俳優・タレントとして今後も活躍し続けたいというグループの存在です。

後者のグループは公になっていないことが多く、私の推測の域を出ませんが・・・。それでも、今回の報道を受けて私が感じることは、性加害の被害を受けていないタレントにとっては、今回のジャニー喜多川氏の性加害問題はあくまでも他人事であり自分にとってはこれまでタレントとして成長させてもらったこと、デビューさせてもらったこと、多くの仕事の機会を与えてもらったことでジャニーズ事務所に対する恩義を感じて、発言を差し控えているように思えてなりません。また、もしかしたらジャニー喜多川氏による性加害の被害を受けたタレントであったとしても、今となってはアイドルとして活躍できるまでに飛躍させてもらったことへの恩義を感じ、その一方で加害者であるジャニー喜多川氏は既に亡くなっていることから、今さら事を荒立てたくはないので発言を差し控え、何もなかったかのように振る舞っているのかもしれません。

性被害を訴えていない後者のグループのタレントたちに共通する点は、自分が所属している事務所内で起こっていた性犯罪事件であるにもかかわらず、発言の内容に当事者意識が全くないことです。

性犯罪は取り扱いが難しいことは言うまでもありません。被害者が泣き寝入りすることが多いのは、心の傷をこれ以上えぐられたくない・・・という思いがあるからです。その一方で、泣き寝入りする被害者ばかりだと、同じような犯罪がなくならないというジレンマに陥ってしまうことも事実なのです。今回のような特殊な事件では、匿名性を担保してでも事件の全容を把握することに取り組む必要性があったのではないかとも感じます。

タレントたちはどんな行動を起こすべきか

そこで、もし自分が当事者だったとしたら・・・という観点から意見を申し上げたいと思います。

もし、私がジャニーズ事務所のタレントだったとしたら、性犯罪を会社ぐるみで隠蔽し続けてきたような事務所に所属し続けることは無理だろうと思います。なぜなら、反社会組織と言われてもしかたがないような会社だからです。ジャニーズ事務所で仕事をし続けるといううことは、ギャラの一部をジャニーズ事務所に落とし続けることになるわけですから。もちろん、これまでの事務所への恩義はありますが、ジャニー喜多川氏の性加害問題がはっきりした以上、そんな犯罪組織に所属し続けることはありえないだろうと思っています。

少し補足します。「反社」と言うと暴力団のような組織を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、私の個人的な解釈は「犯罪組織」、つまり、犯罪行為で収益をあげているような組織、あるいは、ビジネスモデルの中に犯罪行為が内包されているような組織をイメージしています。上場会社などコンプライアンス意識の高い会社ならば、反社と思われるような会社とは取引をしないことが常識なのです。結局、「反社」と見なされた会社は存続できなくなり、社会から抹殺される宿命なのです。

ジャニーズにブランド価値はもう無いのでは…

では、なぜ多くのタレントが今も、そして今後もジャニーズ事務所で仕事を続けたいと思っているのでしょうか?はっきり言って、私には理解できかねます。

これは、私の推測の域を出ませんが、ジャニーズというブランドのもとで働いたほうが得だという判断が働いているのかもしれません。ジャニーズ事務所はこれまでに多くのアイドルを排出し、今も芸能界で多くの方々がアーティスト、俳優、タレントとして活躍しています。これは、ジャニー喜多川氏の功績と言えるのかもしれません。しかし、性加害問題を犯していたという裏の顔が明らかになった以上、その功績を称えることは、もはやできないのです。

日本人は、大盗賊が大金持ちから金品を奪って貧乏人にばらまくことを美談にする傾向があります。また、偉大な功績をあげた政治家が脱税事件や収賄事件で捕まったとしても、その政治家の地元では英雄扱いされ続けている事例もあります。人間とは、善と悪の両面を持つことができる生き物です。しかし、今回のジャニーズの性加害事件で重要なことは、「犯罪」の上に成り立つ「善行」などありえないということです。「こっちで良い事をしているから、あっちで多少悪い事をしても帳消し・・・」なんていう世界はないのだということを全ての人が理解すべきです。

つまり、これまで多くのアイドルや著名なタレントを輩出してきたジャニーズのブランド価値は、今回の前代未聞の性加害問題によって、その価値をほとんど全て毀損してしまったと言ってもよいのではないかと思います。

私は、個人的にはジャニーズ事務所はこれ以上、事業を存続すべきではないと考えています。被害者への補償や救済、そして、所属タレントの他事務所への移転支援のみを行い、それが終了したら廃業すべきだと思います。それほど大きな犯罪事件であり、被害者の方々への配慮が必要だと考えるからです。

ジャニーズ事務所に所属して現在も多方面で活躍しているタレントたちは、自身の努力と才能で今の地位を掴み取ったという自信を持って良いと思います。だから、なおさら思うことは、犯罪組織の汚名となったジャニーズ事務所のもとを離れて、自身のタレント価値を信じて今後も活躍して欲しいと願うばかりです。

ABOUT ME
いずみてつや
1963年生まれ。大阪府出身。千葉県在住。