社会の疑問

なぜ海抜ゼロメートル地帯に人を住まわせるのか?江戸川区では…!?

なぜ海抜ゼロメートル地帯に人が住むのか?

近年、地球温暖化による影響で台風による豪雨・河川の決壊による洪水・高潮などの水害が多発しています。

地表標高が満潮時の海水面よりも低い海抜ゼロメートル地帯は、ひとたび水害が発生すると甚大な被害をもたらすであろうことは容易に想像できます。

記憶に新しい出来事では、11年ぶりに改訂された東京都江戸川区のハザードマップに『ここにいてはダメです!』という刺激的な文言が書かれたことです。江戸川区は荒川や江戸川など大河川の最下流に位置していて、陸地の約7割が満潮時の海面よりも低い「ゼロメートル地帯」になっており、巨大台風や豪雨大雨によって河川が氾濫したり、高潮が発生した場合、「区内のほとんどが水没する」とハザードマップに書かれているのです。

江戸川区の避難所は水害時には水没する可能性が高く避難所としては不適格であることは明らかですし、マンションの高層階に避難したとしても水道・電気・ガス・トイレ等が使えない避難生活が長期間続く可能性があります。

ということで、江戸川区は区民のリスクに対する意識を高めてもらおうという思いから刺激的な文言を使ったハザードマップを2019年に区民に配布したそうですが、これに関しては賛否両論あり、中でもかなり否定的な意見が噴出したそうです。

この出来事に関して、私の個人的な感想は『そこまで注意喚起を受けているにもかかわらず、なぜ海抜ゼロメートル地帯に住み続けるのか?』という疑問がわいてくるのです。私が、もし江戸川区に住んでいたとしたら、間違いなくすぐに他の安全な地域に引っ越すでしょう。

その理由として考えられること

その理由としては、以下のようなことが考えられます。これは、あくまでも推測ですが・・・

  • 先祖代々住んできた土地を簡単に手放すことができないから
  • 住み慣れた地域を離れたくないから
  • 堤防があるから大丈夫、地下放水路があるから大丈夫、マンションの高層階に逃げ込めば大丈夫と思っているから
  • 家賃が安く、アクセスが便利だから
  • 不動産屋から勧められたから
  • 自分だけじゃないので、なんとかなると思っているから
  • そんな危険な場所だとは認識していないから

海抜ゼロメートル地帯に住むことは危険だと知りながらもさまざまな理由からそこに住んでいる人たちが今も多くいます。一種の「正常性バイアス」とも言える心理的な要因だったり、「なんとかなるだろう」といった他力本願的な思考が働いているように思います。

しかし、視点を変えて「なぜ、海抜ゼロメートル地帯に人を住まわせるのか?」という点からは、違った背景も見えてきます。

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なぜ、海抜ゼロメートル地帯に人を住まわせるのか?

なぜ、海抜ゼロメートル地帯に人を住まわせるのか?その理由のひとつは、「不動産屋が販売しやすい物件だから」と思えてなりません。

家賃や販売価格が安く、アクセス面の利便性も良いということで、開発すれば販売し安い物件だったのではないでしょうか!?そして、その販売時には災害時におけるリスク説明などほとんどないといった状況が容易に想像できます。不動産販売時には、売り手側に重要事項を説明する義務がありますが、その中に災害時のリスクについては含まれていないのです。これは、行政の片手落ちとしか言いようがありません。現在は、法改正が進められているようですが・・・。

そして、もう一つは行政が「住民の自己責任」と割り切っているのではないかと思えることです。住民が「ここに住みたい」と言っているのに、強制的に立ち退かせることができるのかどうかわかりませんが、そこまで踏み込もうとしないでハザードマップでリスクを示すだけにとどめ、あとは住民の自己責任に任せて放置していると思えてなりません。

東日本大震災の後に、福島県の一部の市町村では原子炉の損傷や放射性物質の放出・拡散による住民の生命・身体の危険を回避するために、「強制避難」という措置が取られました。

しかし、地球温暖化により年々リスクが高まっている水害や今後30年以内に70%以上の確率で起こると言われている首都直下地震により、多くの人命が失われるかもしれないという事態に対しては、強制的な措置は一切とられていません。

江戸川区では「スーパー堤防」なる計画が進められているようですが、200年以上もかかると言われている計画の実現性は甚だ疑問です。

明治時代には、荒川の堤防を都心側(西側)を高くし、東側を低くすることによって東側が決壊しやすいように設計しておきながら、荒川の東側地域に位置する江戸川区にこれほど住宅が密集するまで放置した行政の責任は大きいと感じるのは私だけでしょうか。荒川が決壊する時は東側から決壊する構造になっているのであれば、そういう堤防を作った行政が荒川の東側には住まないように注意喚起するのは当然のことではなかったのか!?それをしてこなかったツケが今溜まり溜まってどうしようもなくなっているとしか思えません。

本来のあるべき施策とは?

国や東京都は国民や都民の生命を守るための施策を講ずる必要があると思うのです。

『台風による豪雨で荒川が決壊したら・・・、首都直下地震で荒川の堤防が崩壊して洪水が起きたら・・・、そんな大規模災害で東京都の海抜ゼロメートル地帯の住民全員を救助することは困難なので、海抜ゼロメートル地帯の住民は速やかに安全な場所に住居を移動してください。』という要請をすべきだと思います。そして、そのためにかかる住民の負担の一部を国や東京都は支援すべきだと思います。

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ABOUT ME
いずみてつや
1963年生まれ。大阪府出身。千葉県在住。