体験談

私が学童保育の指導員の仕事を辞めた理由

私が学童保育の指導員の仕事を辞めた理由

私は学童保育の指導員の仕事を約1年半勤めました。この仕事を辞めた理由は、「利用者に喜ばれていない…、感謝されていない…と感じたこと」「利用者と指導員の関係が対等とは思えなかったこと」「学童保育という現在の制度の在り方に疑問を感じたこと」です。

そもそも、学童保育は共働きなどの理由で、昼間帰宅しても保育する大人が家庭にいない小学生を預かって、子どもたちが安心して過ごせるよう見守ったり適切な遊びや生活の場を提供するという行政サービスのひとつですから、こういう仕事を通じて地域社会に貢献できると考えて始めたのです。

しかし、1年半の間に感謝されたり喜ばれたりした記憶はほとんどなく、逆に子どもたちやそのご父兄からの不満の声や要望が多く、その声に逆らえないような暗黙の上下関係があるように感じられたのです。学童指導員、市町村や業務受託会社に雇われているはずなのに、利用者であるご父兄から直接仕事が降ってくることもあるほどでした。利用者であるご父兄は、料金を払って利用しているという立場から、いろんなことを主張したり要望してくるのです。

その一方で、私たち施設運営側の利用者に対する不満は、よっぽど酷いケース以外は我慢して飲み込まざるをえないという体質が現場にはあるように感じていました。

学童保育の利用者の声が強すぎる

学童保育では、1日の過ごし方というものがだいたい決まっています。宿題をして、おやつを食べて、遊ぶという流れです。ところが、利用者であるご父兄からは、「宿題は学童で終わらせて欲しい」「もっと校庭で遊ばせて欲しい」「おやつが多すぎる」「提供されるおやつは嫌いなものばかりで食べれるものがない」「もっとボール遊びをさせて子供たちを発散させて欲しい」「自分の子どものクラスを変えて欲しい」などさまざまな要望が届きます。また、1日の保育時間が長い夏休みなどの場合には、「夏らしい水遊びなどを取り入れて欲しい」「イベントを増やして欲しい」「映画鑑賞をさせて欲しい」「クラス合同で大勢で遊ばせて欲しい」などの要望も届きます。

さらには、「子供への叱り方が怖すぎる」「自分の子どもばかり叱りすぎる」「お友達とケンカになったときに子どもの言い分をきちんと聞いてもらえなかった」「ぼーっと突っ立っている指導員が多すぎる」など、不満の声も少なくありません。一種のカスタマーハラスメントに近いようなものを感じたこともありました。

もちろん、指導員の側で反省すべき点・改善すべき点は指導員会議などで話し合って改善するように心がけていましたが、それ以上に要望や不満の声が多く、施設運営側としても要望を受けるばかりで、その結果、現場のスタッフにしわ寄せが行って振り回されることも多くあります。一方で、ルールを守らない子ども、何度注意しても危険な行為を辞めない子ども、お友達に意地悪をする子ども、ウソをついて指導員を困らせる子どもには、いくら手を焼いてもその父兄に不満をぶつけることはほとんどありません。これでは、指導員のストレスが溜まる一方なのです。

学童の現場が長くなるにつれ、「子どもにとって何がベストか?」というよりも、「その子どもの親はどう思うか?」っていうことを優先してしまうような風潮があり、そういう現場の実態にも疑問を感じていました。

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各家庭での子育ての方針はバラバラ!

各ご家庭によって子どもの育て方については、方針がバラバラです。たぶん、これは当たり前のことでどうしようもありません。お友達と遊ばせてのびのび育てたいというご家庭もあれば、しっかり勉強させたいと考えているご家庭もあります。普段は家の中でゲームなどで一人で遊ぶことが多いので、学童では大勢で走り回って体を動かして遊んで欲しいと思っているご父兄も少なくないようです。

最近は、遊び道具を片付けない子どもも増えています。あからさまに他の友だちに片付けを押し付ける子どももいます。食事やおやつの時間になると一旦おもちゃを片付けるように指導しますが、「また遊ぶからそのままにしておきたい」という子どもも少なくありません。学童の玩具は子供たちみんなのもので、一人の児童が特定のおもちゃを独り占めすることにならないように一旦片付けるように指導していましたが、言っても聞かない子どももいるのです。おそらく、お家ではそういう習慣がついているのでしょう。

習慣という点では、お行儀が悪い子どもも少なくありません。寝っ転がって本を読む子ども、机の上に登る子ども、カバンや文房具を振り回したり投げたりする子ども、おやつの時間には毎回机や床にこぼす子ども、トイレの床を毎回びしょびしょにする子どもなど。

家庭での育てられ方による違いは、なかなかストレートには注意できないこともあります。ただ、あきらかに他の子どもに迷惑をかけている場合や危険な行為については、注意をするようにしていました。

叱るのはいつも同じ子どもばかり

放課後に子どもたちが学童にやってくると、まず宿題をします。でも、中にはいつまでも遊んでいて宿題を始めない子どもがいます。始めたかと思えば、隣のお友達とふざけ合って、また遊び始めるのです。周りの子どもたちが宿題に集中できずに迷惑しているときは注意します。おやつの時間になると、宿題やおもちゃは片付けるのですが、なかなか片付けない子どもがいます。注意を受ける子どもは、いつも同じ子どもであることが多いんです。注意するほうも人間ですから、だんだん声のトーンが激しくなり、時には大声で叱ることもありました。他の指導員からは「空気が引き締まって助かる」と言われるのですが、私にとっては決して気分の良いものではありませんでした。それどころか、学童の仕事を始めて、性格が変わってしまったのでは…と自分自信を嫌いになりかけたこともありました。

子供たちは片付けて手を洗って席に付くのですが、おしゃべりをしておやつ当番のお話を聞かない子どもが必ずいます。時には、静かになるまで「いただきます」をしないでいることもありますが、おしゃべりを辞めない子どものために、静かにしている子どもまで待たせることに、不公平を押し付けているようで気がとがめることもありました。

集団生活の中では、声をかけてもなかなか行動しない子どもが少なからずいて、すぐに行動してくれる子どもたちがいつも待たされるという場面が常にありました。

保育に関する知識・経験がない者にとって・・・

私は、学童保育の指導員の仕事をするまで、全く保育や教育の仕事に関する知識や経験がありませんでした。今は、学童保育の指導員が不足している状況なので、経験不問で採用されるのです。いまから思えば、学童の現場に出る前に、ある程度は現場でも役に立つような基礎的な知識を習得する研修のようなものがあったほうが良いのではないかと思っています。

なぜなら、指導員という立場で子どもたちに接する際には、指導員のひとつひとつの言動の全てが子どもたちに対する「教え」になりうるからです。特に、指導員が子どもたちに注意する言葉は、その表現の仕方ひとつできちんと理解されるものにもなることもあれば、ただ不満がつのるだけのものにもなるからです。

やはり、どんな職場でも「人手不足」⇒「採用のハードルを下げる」⇒「仕事の質の低下」⇒「利用者の不満」⇒「辞める人が増える」⇒「さらなる人手不足」という悪循環は起きるものなのだと実感しました。

この悪循環を断ち切るためには、さまざまな改善点があるとは思いますが、そもそも今の行政サービスが行う学童保育が「子どもを預かる・見守る」ということに主眼が置かれているところに問題があるのではないかと思えて仕方がないのです。言い換えると、「子どもたちを預かって教室の中に閉じ込めて、おもちゃとおやつを与えて後は見守るだけ」という付加価値の低いサービスを未経験者などを雇って行っているわけです。そうではなくて、「子どもを育てる」という点に主眼を置いて、「生活指導」「スポーツ」「集団活動」など何か特徴を持って「育てる」という点に注力し、そういう指導ができる専門性の高い指導員を揃えるべきではないかと思います。そうすることで、サービスの付加価値が高まるわけです。

社会における「子育て」に対する考え方は、子供が小学校に入ると日常生活のことはひと通り自分でできるようになり、親が付いていなくとも大丈夫だという認識が広くあるようです。でも、子供はそれぞれの成長段階で常に悩みを抱えて日々を過ごしています。自力で悩みを乗り越えていく子どももいないわけではありませんが、周囲の大人の支えが必要であることは間違いありません。この周囲の大人の支えがなくなると、いじめが放置されたり、非行に走ったり、場合によっては自殺するという悲惨な事態を招いてしまうことにも繋がりかねません。学童の指導員も子どもに寄り添う大人として接しているわけですから、「子育て」の一躍を担う重要な仕事なのです。しかし、現在の学童保育の指導員の仕事は、そういう高いレベルの仕事を求められておらず、ただ「預かる」「見守る」ということに主眼を置いたサービスにとどまっており、保育や教育に関して無資格・未経験でも携われるほどのレベルの低い仕事という扱いをされているのです。だからこそ、辞める人が多く、恒常的に人手不足に陥っているのです。

その結果、現状の学童保育の制度は、子育てより仕事を優先したい大人の受け皿として、安価で特徴のない「子どもを預かる・見守る」ことだけに主眼を置いたサービスになってしまっているように感じます。

[お断り]

以上の内容は、私が学童保育の現場で体験してことをベースにまとめたものです。世の中の全ての学童保育がこういう状況だというわけではありません。

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ABOUT ME
いずみてつや
1963年生まれ。大阪府出身。千葉県在住。